【そして未来へ】

 

 

予算要請行動でデモ行進 全腎協結成後、予算要請行動で官庁街を練り歩く各地から集まった全腎協代表
 

 

《腎疾患対策費、初の予算化》

「生きたい!」と共通の願いを胸に集結した患者達にとって、

組織作りや運動は未経験であり、身体的にも

かなり過酷なものでしたが、連日の陳情・要請活動等

無我夢中で運動を展開しました。

 

8月厚生省は1972年度(昭和47)予算の概算要求を発表し

この中で初めて、11億円余の腎疾患対策費が計上された。

9月この要求を裏付けるために

「腎機能不全患者の治療状況に関する実態調査」を

実施しています。

 

並行して全腎協は結成後、開始した署名運動をもとに、

10月初めての国会請願を行った。

11月以降、厚生省・大蔵省・国会各党に対して

厚生省の要求した予算の全額予算化を求めて

連日の声同を強めた。

しかし「11億円は削らないで!」と言う患者の願いに反し

大蔵省内示では、要求3分の1強・4億2千万円と大幅に削られ

患者の期待は裏切られました。

 

全腎協はデモ行進を続け、最終的には1972年1月12日 

概算要求の約半額5億6千万円の政府案が確定した。

政府案では、1972年度から

1.人工腎臓を5カ年計画で増設しいてくこと

2.人工透析医療費として身体障害者福祉法にもとづく更正医療

(18歳未満は育成医療)を給付すること

3.透析関連技術者の養成訓練を行うこと

4.透析療法の基準づくりを行うこと

5.腎炎・ネフローゼ児の療養費の補強を行うこと

等を盛り込みました。

 

銀座の歩行者天国で

署名活動

銀座の歩行者天国で署名活動  
 

 

《自己負担の解消》

連日における激しい運動の結果として、身体障害者福祉法にもとづく

更正医療法が適用されたことは、【全腎協】結成前の

「金の切れ目が、命の切れ目」「保険の切れ目が、生命の切れ目」と

言われた悲惨な実態がここで初めて解消されたことを意味します。

結成時に掲げた要求「全額国庫負担」ではなく、保険優先の

公費医療制度であり、自己負担分を公費(国と都道府県負担)で

賄うというものであるため、前年の所得によって〈費用徴収〉される制約は

あるものの、高額な自己負担は基本的に解消されました。

この結果、性別・年齢の差・貧富の差・無く「誰でも、いつでも」透析が

受けられる条件が確立されました。

 

更正医療の適用と同時に、「人工腎臓整備5カ年計画」が実施されたことも、

人工腎臓の全国的な普及に大きな役割を果たしました。

国公立病院・療養所に人工腎臓を計画的に整備していくことを決めたことは、

民間病院への人工腎臓の普及に大きな影響を与え、その後全国的な増設に

結びつき、今日の安心して受けられる医療へと発展しました。

また、日本経済が高度経済成長期に入りかけた頃であり

新しい医療技術には、比較的高い診療報酬も高めであったことが

普及に幸いしました。

全ての足並みの揃いと、透析技術自体の進歩も相まって、

1972年10月(更正医療が正式に適用)を境に透析機器及び透析患者は

爆発的に増加しました。

 

 

  厚生省で訴えるK事務局長 厚生省で訴えるK事務局長
 

 

《”恩恵”と言う言葉》

全腎協が結成され1年足らずで、医療費の公費負担・

人工腎臓の増設等が実現しました。

この透析で多くの患者が生命を救い、社会復帰への道を開きました。

大きな業績として結果を成し得た背景には、色んな条件が

重なり影響しあったことは否定できないとしても、その源としてあるのは

私達の先人達の、正に「いのちを賭けた、厳しく、激しい、そして熱い運動」

の成果です。

と同時に、私達の想像を遙かに超えた、身体的・精神的苦痛を

伴ったものと思われます。

この事実を、今透析を受けている患者のみならず、移植者も、

また総じて腎不全医療関係者も決して忘れることなく、胸に刻んで

生活したいものですね。

 

透析患者については、「様々な恩恵に浴しいてる」と

評されることも有ります。

私達にとって”恩恵”とは、辞書で著される「めぐみ」や「なさけ」ではなく、

敢えて”恩恵”と言う言葉を使用するなら、

「先人達や、私達自身が運動し築き上げることから

うまれる”恩恵”を受けている」と 言えるのではないでしょうか。

全腎協設立から中心的役割を果たし、初代会長として精力的に活動された

O氏は、更正医療が正式に適用になった72年10月、

心不全のため急逝されました。

機関誌『全腎協』5号に、「透析のみならず、腎臓病患者全てに

手を差しのべて、大きな組織に発展させましょう!」と

呼びかけを遺稿として…。

私達は、この「呼び掛け」をこれからの活動の中で、より大きく深く実践し、

未来へ引き継がなければ、いけないのではないでしょうか。

<あとがき>

近年、厳しい情勢が迫り来る中、より一層の団結を持って

今後も、私達の「命を守る運動」を続けていかなければなりません。

ともすれば、活動の意義さえも、見失いそうな事もあります。

こちらを見て戴いて、何かを感じて戴けたら幸いに存じます。  幸

    

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